2017.8.19

政府が全国民の遺伝子を分析し、16歳で最適な結婚相手を指定する「超少子化対策基本法 通称ゆかり法」が施行されている社会を描いた漫画『恋と嘘』(講談社)。

脳科学者の中野信子さんに、『恋と嘘』の重要なテーマである“遺伝子と恋”の関係について聞いたインタビュー、第2回では「結婚に向いている遺伝子、向いていない遺伝子」の存在が語られます。

第1回「遺伝子が合う相手は相性もいい相手?」はこちら

脳学者・中野信子さん

結婚に向いている遺伝子、向いていない遺伝子の持ち主がいる!?

——よく恋愛と結婚は別、と言われますが、それも遺伝子の相性が関係しているんですか?

これは相性というより、そもそも結婚に向いている遺伝子の持ち主とそうでない遺伝子の持ち主 がいて……。

そのことが分かったとき、けっこう物議を醸したんですね。
「ということは、離婚しやすい遺伝子があるということですか!?」と。

離婚が個人の資質だけじゃなく遺伝子が関係しているということになると、家族に離婚者がいた場合、 その係累の人は離婚する可能性が高いということになる……。遺伝子というのはその人だけのもの ではなく、子々孫々に伝わっちゃうものですからね。

これはそのまま“ディボースジーン(離婚遺伝子)”といわれたのですが、実際、男性がそれを保持している場合は離婚率・未婚率が高く、結婚していても奥さんの不満度が高い、という結果が出た ことで話題にもなりました。

——それを何とか外側から見極める方法はないんですか!?

詳しい学問的な説明は省きますが、そういう人は愛着を形成しにくい、人に対して親切な行動をとりにくい、という傾向はあります。いわゆる、ちょっと利己的だとか冷たいとか思われがちなタイプ ですね。だから結婚生活だけでなく、集団生活にもあまり向かないんですね。

恋と嘘

恋愛、結婚……どの相性にフォーカスするかが重要!?

結婚に向いていない遺伝子の持ち主がいる?

——すると、「親切でいい人」と言われる人が結婚には向いているということですか?

それが上辺だけでなければ……(笑)。

結婚するまでの期間ぐらいなら、仮面をかぶれる人もいますからね。その仮面に騙されず相性を調べられるのが、遺伝子のいいところだと思います。

ただし! 「親切でいい人」を誰もが好きになるかというと、そうでもないですよね。逆に「振り回す人のほうが好き」という人も多い。そこにフォーカスすると“恋愛の相性”ということになるわけです。残念ながらこの場合は、離婚率は高くなるかもしれません。

でも運命の相手と思ってしまいやすいのは、この相手。そんなふうに、どこに焦点を合わせるかで計算結果は変わってくる、というのも遺伝子の面白いところかもしれませんね。

——自分でどの相性にフォーカスするか、決められたらいいですね。

「子供」にフォーカスしますとか、「運命の恋を何度かしたいです」とか、「若いうちは盛り上がる人と出会って、歳を取ったら性格が合う人で出会いたいです」とか(笑)。

ただしそこで問題になるのが、脳の可塑性(かそせい)です。脳は非常に柔軟で、変化することが可能なんですね。これが他の臓器と違うところなんですが……。

つまり状況によって、遺伝子とは違うふるまいを意図的におこなうことができるんです。先ほど仮面をかぶる話をしましたが、「この人と一緒にいたい」という何らかの強い要因があれば、脳が「この人を好きなんだ!」と自分のことも騙して、一生仮面をかぶり続けることもあり得ないことではないんです。

もちろん相当の苦痛や忍耐を伴う可能性がありますけど。でもそれも、ひょっとしたら“愛”という言葉で語られてもいいのかもしれませんね。

〜第3回へ続く〜

恋と嘘(ムサオ:著)

「誰かを好きになる」——人はいつの間にその罠に墜ちるのか。人生のパートナーを国が決める世界。それは希望であり、絶望であった。どこにでもいる古墳好きの少年・根島由佳吏は、そのちっぽけな胸に、燃えるような恋心を秘めていた。恋が許されない世界で、16歳の夜、少年は、禁じられた冒険へはしり出す!!

コミック1〜6巻発売中
TVアニメ「恋と嘘」 TOKYO MX ほかにて好評放送中
映画「恋と嘘」 2017年10月14日(土)全国ロードショー

※本記事は中野信子さんへインタビューを行い構成しております